田んぼアートができるまで

はじめに

田んぼアートとは、田んぼをキャンバスに見立て色の異なる稲を使って、巨大な絵や文字を作り出す芸術作品です。全国的には、青森県田舎館村や埼玉県行田市などといった田んぼアートの知名度が高い場所はいくつかありますが、2015年には小山市内でも島田、絹、生井の3地域で行っており、2016年に島田会場(小山市美田東部土地改良区)で行う田んぼアートを含めると、6回目となります。

田んぼアートで植え付ける稲は、日が経つにつれ、色合いが微妙に変化していくため、その時期ならではの“巨大なアート”がお楽しみいただけると思います。

田んぼアートができあがっていく過程を2015年の生井会場を参考に紹介いたします。

1. 小山市内における田んぼアートの場所
1. 小山市内における田んぼアートの場所

2015年生井会場での作業の流れ

  1. デザイン(絵柄)の決定
  2. 現地事前測量(基準点測量、見学する位置からの写真撮影など)
  3. デザイン図面の配置(パソコンで写真にデザインを重ね、図上での配置を決める)
  4. デザインの座標化(測量のため変化点を数値化する)
  5. 田んぼでデザイン絵柄を測量しつつ、目印を配置
  6. 目印に指定の苗を植え付け
  7. 苗が立派に育つように、適切に水を管理

1.デザイン(絵柄)の決定 及び 2.現地事前測量

田んぼアートの水田(2015.3月撮影)【生井会場】
田んぼアートの水田(2015.3月撮影)【生井会場】

生井会場の特徴

  • 撮影場所から田んぼまでの距離は約50m、高低差は約12m。
  • 面積は約7,300㎡。(たて:約60m、よこ:約110m)
  • 見学する場所には、後ろを振り返ると渡良瀬遊水地があり、とても景色がいい場所です。

平成27年度に作成したデザイン

公募によって決定した2015田んぼアートデザイン【生井会場】
公募によって決定した2015田んぼアートデザイン【生井会場】
田んぼアートデザイン(当初案)【生井会場】
田んぼアートデザイン(当初案)【生井会場】

デザインを一般公募し、政光(まさみつ)くん・寒川尼(さんがわに)ちゃん、鳥の“トキ”に決定しました。

3.デザイン図面の配置

 

田んぼアートデザイン加工方法【生井会場】
田んぼアートデザイン加工方法【生井会場】

田んぼアートで見る絵はトリックアートのようなもの。遠近法を用いて立体的に見えるようにします。(奥行を広げるイメージ

田んぼアートデザイン加工詳細【生井会場】
田んぼアートデザイン加工詳細【生井会場】

縦と横に、見かけ上のメッシュ線を作成し、その上に絵を載せます。(升目一つ一つは、本当は1.0m×1.0mのはずですが、絵で見るとおり平行四辺形になり、大きさも奥にいくほど小さくなります

どこから見せるかによって仮想上の平行四辺形の形が変わります。

遠近法を駆使した画像処理の様子【生井会場】
遠近法を駆使した画像処理の様子【生井会場】
画像処理後(変換後)のデザイン(案)
画像処理後(変換後)のデザイン(案)

設計上のウラ話

遠近法を駆使したデザインは、どんなパソコンソフトを使えば出来るかが分からなかったため、普段から業務に使用しているCADのソフトメーカーに問い合わせしました。しかし、デザインを遠近法に合わせて設計を変換する機能は備えられていないとの回答を頂きました。(>_<)

このため、最初の設計は3,500点全てを手計算で算出しました。そんな試行錯誤を続けていたある日、職員がパソコン操作を応用させたところ、遠近法に合わせた設計の変換が“出来た”のです。

出来たはいいが、本当に立体的に見えるかが不安で事前リハーサルを行いました。

事前リハーサル【生井会場】
事前リハーサル【生井会場】

簡易な方法で行ったリハーサルでしたが、“い”の文字と“政光くん・寒川尼ちゃん“が見えました。一方で、政光くんと寒川尼ちゃんの洋服が、手前の畦畔で見えないことが判明したので大きさ及び位置を修正することにしました。

ちなみに、測量の誤差は3cm以内ですが、田んぼアート苗植え付けの誤差は何cm以内なのでしょう?

遠近処理後のデザインを平面図上に重ねた図面(完成形)【生井会場】
遠近処理後のデザインを平面図上に重ねた図面(完成形)【生井会場】

画像処理したデザインを平面図に配置するとこのようになります。少し放射状(斜め)になります。

文字絵柄下にある青い線は、畦畔によって見えなくなってしまうラインを表示しています。

完成形ではひらがな文字を漢字に変更しました。

4.デザインの座標化

座標化した図面(座標点入り)【生井会場】
座標化した図面(座標点入り)【生井会場】

図面どおりに田んぼへ描くため、線が曲がっている場所一つ一つに番号を付ける。

番号に沿って線を結べばデザインが出来上がる。

番号の配置及び線の結び間違いで、全く異なるデザインになるので、要注意!

 

座標の決定方法

座標値【生井会場】
座標値【生井会場】

一番上のNO.2881を例にすると、X座標の数値80.344は、基準となる場所から横に80.344m。Y座標の数値-22.129は基準となる場所から縦に-22.129m。この線どおしが交差した場所が点番2881という位置になります。

座標化した座標点例(寒川尼ちゃんの顔の拡大図)
座標化した座標点例(寒川尼ちゃんの顔の拡大図)

5.田んぼでデザインを測量しつつ、目印を配置

測量機器(トータルステーション自動対回【じどうついかい】)
測量機器(トータルステーション自動対回【じどうついかい】)

この器械で測量を行います。トータルステーション自動対回と言います。

事前に座標化した数値(データ)を器械に読み込ませ、基準となる位置から測定することでポイントを導き出す方法としています。(測量ポイントの方向へは機械が自動で向いてくれます。)

田んぼの中には、ターゲット(測量鏡)を持った作業員が、トランシーバーで指示を受け、右や左、前や後ろに動きながら場所を探って決めていきます。

作業員は1班あたり4人必要であり、【①測量器械担当②ターゲット(鏡)担当③測量目印担当④結線担当(どれが絵のどの部分なのか判らなくなってしまうので、植える苗ごとにヨシに“ひも”を結びます)

1地区あたり作業員の延べ人数は、3日間とすると12人×3日=36人必要となります。

測量1点あたりの作業時間は最低1分として計算すると、一日何点測量できるでしょうか?

※作業時間を7時間として計算→7hr×60min=420点。作業は3班で3日間とすると、420点×3day×3=3,780点できます。(順調に休みなしで1点あたり1分で終わった場合の計算です)

結線した “ひも”は、稲の根がしっかりしてきたころに外します。

赤い点線の先に鏡があって、器械から出る赤外線の光で距離を測っています。
赤い点線の先に鏡があって、器械から出る赤外線の光で距離を測っています。
測量している様子
測量している様子

6.目印に指定の苗を植え付け

苗の種類は5~6種類使っています。
苗の種類は5~6種類使っています。

下生井会場———–雪あそび、紅あそび、黄色大黒、むらさき米、とちぎの星、みどり米の6種類を使用しました。

それぞれの苗の特徴

 ・雪あそびは葉が白くなります。(背丈は低い)

 ・紅あそびは葉がピンク色になります。(背丈は低く、色を鑑賞できる期間が短い)

 ・黄色大黒は葉が黄色になります。(背丈は低い)

 ・むらさき米は葉が黒っぽくなります。

 ・とちぎの星は新品種の米(なすひかりを父親にもつ)、主に背景として植えつけています。

 ・赤穂米は他の品種よりも背丈が高くなります。

 ・あさひの夢は、コシヒカリよりも米粒が若干大きく収穫量が多いといわれております。主に背景として植えつけています。

 ・みどり米は古代米(もち米)、もみの色が緑色をしています。

生井会場のデザイン(真上から見るとこのように見えます)
生井会場のデザイン(真上から見るとこのように見えます)
田植えイベントの様子
田植えイベントの様子
田植えイベントの様子【生井会場】
田植えイベントの様子【生井会場】

7.苗が立派に育つように、適切に水を管理

田植え2週間後の様子
田植え2週間後の様子

注意・問題点

田んぼアートでの一番の難しさは描く線の太さになります。描く絵全てを稲で表現する訳ですから、あまりにも細い線は表現することができません。(デザインと異なった線の太さになってしまいます。)稲は育つ過程で“分けつ”していくため、線幅は10cm以下とならないように注意しておく必要があります。

測量時には、苗を植える時に目印となる“ヨシ”を指します。刺した“ヨシ”の根元には必ず苗を植え付けなければなりません。

また、見る方向から “縦方向“に植え付けると苗と苗の間に隙間ができるため仕上がりが良くならないことから、広範囲の苗の植え付けは極力横方向に植えつけます。